ATにおけるボディマッピングの位置づけ

今日は、ボディマッピングとアレクサンダーテクニーク(以下AT)の関係性において、私が今考えていることを書きたいと思います。

ボディマッピングとは、日本語に訳すと「身体の地図」です。それは人間の身体の解剖学的な構造や部位を示すマップです。

ただ、ここで取り上げるボディマッピングは、単なる身体の地図ではなく、自分で自分の身体の地図を作って行くことを意味し「身体の地図作り」と言われます。私たちは意外に、自分たちの身体の事を知りません。

例えば、

● 首とは、どこからどこまでの事を言うのか?

● 肩とはどこを指すのか? 

などを知って行くと、身体のデザインの通りに身体を動かすことができ、身体の誤用を防ぐことができます。

特に音楽家、運動選手、ダンサーなどは長時間の練習や演奏を行うため、身体への負担が大きい場合があります。ボディマッピングは、適切な身体の使い方を身につけることで、疲労や怪我の予防にも役立ちます。

ATのレッスンでは先生によって、このボディマッピングを取り入れています。時には、ボディマッピングとATの違いがわからなくなってしまう生徒さんも居るほど、レッスンのほとんどがマッピングになっている先生も居るでしょう。

そのくらいボディマッピングは役に立ちますが、実はFMアレクサンダー自身は、ボディマッピングや解剖学的なことには一切触れていません。

それはFMアレクサンダーが本来伝えたかったことは、身体の部分的な事ではなく、もっと先の大事な部分「現代人の身体の誤用」についてでした。

「なぜ、現代人は身体を誤用してしまったのか?」「それはどういう事を意味しているのか?」を伝えたかったのでしょう。

ただ、私たちがFMアレクサンダーの考えに基づいて、失われた身体のバランスを再び取り戻そうとする際、例えば「ネックフリー(首を自由に!)」と考える時に、「首は一体どこからどこまでを言うのか?」がわかっているのと、いないのとでは結果が全然違うという事と、教師と生徒間で共通の認識を持っていないと、うまくレッスンが運ばない、と言う事でボディマッピングと言うものが出て来たのだと思われます。

そういう意味で、ボディマッピングはATととても相性が良いと思います。

ただ、私がマッピングを教えていて思っていることは、身体があまりにガチガチの人などは、たぶんボディマッピングの説明をしても、それを頭では理解できるけれど、自分の身体の中でクリアにしていく事は難しいのでは?と感じます。そんな時は、やはりATのHands-on(ハンズオンと言う手で生徒さんに触れる手法)が必要になってくると思います。Hands-onで身体が緩んでくると、マッピングを考えやすくなります。私自身、何度もそれを経験しています。昔は解剖図をいくら見てもピンと来なかった部分が、だんだん自分の身体の中でクリアになっていきます。身体が硬い時はまるで暗闇の中で目が見えないような感じですが、身体が緩んでくるとその闇の部分に光がさして来るように感じます(これはあくまでも私の感覚ですが)。そうすると、図解などで見た解剖図が自分の身体の中にあるようにリアルに感じられるようになる=身体の使い方が洗練されていきます。

人はハンズオン体験の感覚を再現したり、完全に覚えておくと言う事はできない事が多いですが、マッピングは事実としてあるものなので、その知識は家に持ち帰ることができるし、それを再び人に伝えていく、ということができるので、この二つの要素がATのレッスンで上手く組み合わさって行く感じが、私個人的には好きですね。

今の世の中的には、マッピングみたいなものの方が科学的根拠があるのでわかりやすくて学びやすいですが、「身体で理解する」ことができることに価値があると私は思っています。

そういう意味では、マッピングはアレクサンダーテクニークを学ぶツールの一つと考えて良いのではないでしょうか。

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