AT用語インヒビション(Inhibition)は、日本語に訳すと「抑制」です。でも、「抑制」ってちょっと「抑圧」をイメージしてしまい、辛く感じるかもしれません。ですので、辛くなり過ぎない様、少し注意しなければいけない用語だと私は思っています。
実は、インヒビション(抑制)は、皆さんも日々知らないうちにやっています。
例えば、ケーキがここにあります。
食べたいけど、「不健康だ!」「太ってしまう!」
と言うことを考えた時、
「食べたいけど、辞めておこう」と言う決断をします。
これは一種のインヒビションです。
これ、時になかなか困難なんですがね。
ただ、ATにおけるインヒビションとして、よく言われるのは、
エンドゲイニングしない!(目標に突っ走らない!)意味として使われます。
例えば、楽器をやる人なら、楽器を手に持った瞬間や、ピアノの前に座った瞬間、もう音を出す行為に飛びついているのが、現状です。
ATでは、そこにインヒビションを用います。
つまり、楽器を手に持った瞬間、パッと音を出してしまうのではなく、自分に少し抑制をかけ、ちゃんと身体全体が上手く機能しているか?を考える隙間(ほんのちょっと)を与えます。それを繰り返すことよって、少しずつ自分の癖を辞めていくことができます。
また、伝統的なATのワークとして、イスを使うチェアワークがあります。
それは何をやっているかと言うと、「イスから立つ」と言う行為をしようとすると、人は「立つ」と言う目標のために、今自分の身体がどんな状態かを考える間も無く、あっという間に首を硬くして身体を上に引っ張り上げ始めます。そこに「ちょっと待った!」をかけるのが、インヒビションです。インヒビションする事によって、いつもの癖(首を固くして、身体を上に引っ張り上げない立ち方)をしない事を学びます。
何度もレッスンでその経験を意識的に重ねて行くと、気づいたら習慣が変わっていて、知らないうちにインヒビションをしている様になります。
また教師の手自体も、インヒビションを助ける役割を持っています。教師は、生徒さんの身体の緊張に対してハンズオンをすることで、インヒビションを促します。(この辺りの事、どのくらいハンズオンを使うか?は、教師の考え方によって大きな差があるように思います。)
ATのレッスンでは、生徒さんが自らインヒビションをする事によって、また教師からの強いインヒビションを持ったワークを受けることによって、身体が余計な事をしなくなり、よりバランスの取れた状態になります。
これを、「プライマリーコントロールが上手く働いている状態」とも良います。
いかがでしたでしょうか?
インヒビションについて、少しはイメージを持てましたでしょうか。冒頭でも述べましたように、インヒビションは「抑圧」みたいな形でやると、うまく機能しません。なぜなら、私たちは日常において、絶えず習慣で生きている生き物なので、しょっちゅうインヒビションを忘れてしまうのです。その度に、自分に対して積み深く思ってしまったりする必要はありません!ほんの少し、行動の合間合間に、自分にスペースを与える感じで考えてみて下さいね。